(台北中央社)文化部(文化省)は30日までに、1960年ローマ五輪の男子十種競技で、台湾の楊伝広が獲得した銀メダルを、国宝に登録すると発表した。台湾人選手が五輪で手にした初のメダルとされる。
楊は台湾原住民(先住民)族アミ族にルーツを持つ。日本統治時代の1933年に東部・台東で生まれた。54年と58年のアジア競技大会では十種競技で金メダルを獲得し、「アジアの鉄人」と呼ばれた。その後は後進の指導に尽力し、台湾における十種競技の基礎をつくったとされる。2007年に亡くなった。
文化部は、当時台湾が対外関係で困難な局面に立たされる中、楊のメダル獲得は全国民の愛国ブームを巻き起こしたと説明。メダルは国民の集団的記憶となり、スポーツの栄誉とエスニック・アイデンティティーの歴史を見届けたとした。
またかつて楊は中国語での受け答えが苦手で、それをからかうようなあだ名がつけられていたが、メダルの獲得をきっかけに率直な人物像へと変わり、台湾原住民が受けてきた偏見や固定観念を見直させる歴史的意義のある出来事だったとしている。