希少鳥類とされるレンカクの赤ちゃんが無事に育つことができるよう、収穫期を迎えても作物の一部しか採取しない農家がいる。南部・高雄市の美濃でご当地野菜として知られるタイワンガガブタを育てている李金洲さんだ。
李さんの水田は美濃湖の近くに位置する。その周りには、地元の愛鳥家やボランティアたちが水に浮くスイレンの葉の上に巣を作る習性を持つレンカクのために植えたヨザキスイレンやヒシの田んぼなどが広がる。そのかいあって、レンカクは近年、“自分専属の田んぼ”に巣作りをするようになった。
だが今年は収穫期直前の李さんの田んぼに白羽の矢が立った。レンカクの雌がここで卵を四つ産んだのだ。これを知った李さんはレンカクの子育て用として、田んぼ全体の3分の1を残し、収穫しないことを決めた。
6月末に卵からひなが孵化。隣の田んぼで餌探しができるほどに成長している。活動範囲の拡大に伴い、足を踏み外して農業用水路の溝に転落することがしばしば発生。ボランティアたちによる懸命の救助にもかかわらず、4羽のうち1羽が死んでしまった。
そんなことが2度と起きないよう、李さんは今度用水路に黒い網を張り、水路に“蓋”をすることでひなが他の田んぼを自由に行き来できるようにした。“蓋”をかけられた水路は「金洲大橋」と呼ばれ、ひながうまく飛べるまでその安全を静かに見守っている。