アプリで読む
ダウンロード

【全文掲載】国慶日祝賀式典 頼総統が「変化の中 奮い立つ新しい台湾」アピール

2025/10/10 13:12
国慶日祝賀式典に集まる国民らに手を振る頼清徳総統=10月10日、台北市
国慶日祝賀式典に集まる国民らに手を振る頼清徳総統=10月10日、台北市

台北市の総統府前で10日、中華民国国慶日(国家の日)を祝う式典が行われた。この中で頼清徳(らいせいとく)総統は、「変化の中 奮い立つ新しい台湾」をテーマに演説を行った。総統府が提供した演説全文は次の通り。

変化の中 奮い立つ新しい台湾

祝賀大会の議長である韓国瑜立法院長、蕭美琴副総統、卓栄泰行政院長、ベリーズのフロイラ・サラーム総督ご夫妻、セントルシアのエロール・チャールズ総督ご夫妻、パラグアイ共和国のラトーレ下院議長、日本「日華議員懇談会」の古屋圭司会長、国交樹立国と友好国からお越しの祝賀団団長、各国の駐台湾外交使節、国内外からお越しの貴賓の皆様、そして会場及びテレビやライブ配信をご覧になっている国民の皆様、こんにちは!

今日は中華民国の建国を記念する日です。毎年、私たちは一堂に会し、国の誕生日を祝っていますが、今年は特別な意味を持ちます!

今年は台湾の民主化にとって歴史的な一年だからです!

先月9月10日、私たちは歴史的な瞬間を迎えました。台湾で戒厳令が解除されてからの日数が、戒厳令下にあった息苦しい日々の数を正式に超えたのです。これは、台湾が権威主義の影と完全に決別し、民主的で希望に満ちた未来を迎えたことを象徴するものです。

私たちは、侵略に抵抗するために結束して流された血と涙や、民主主義、自由、そして主権在民の実現を求めて払われた数々の犠牲を決して忘れません。かつてこの土地に刻まれた物語は、どれも私たち共通の記憶だからです。

そして、計り知れない苦難を乗り越えて築き上げられた「民主主義の台湾」こそ、台湾、澎湖、金門、馬祖に住む2300万の人々にとって、この世界における最も明確なポジションです。台湾はアジアにおける民主主義の灯台であり、いまだ権威主義体制の下、暗闇の中で生きる人々のために、永遠に希望の光を与え続けています!

今年は台湾にとって、まさに台頭の一年でした!

現在、世界のどの国も劇的な変化と課題に直面しており、台湾も例外ではありません。ロシア・ウクライナ戦争、中東情勢の混乱、及び中国の継続的な軍事拡大に加え、経済と産業においては米国の関税政策による深刻な影響を受けています。

しかし、台湾の人々はひるむことなく、国際社会が称賛するほどの経済成長を達成しました。アジア開発銀行は最新の報告書で、今年の台湾の経済成長の展望を、当初の3.3%から5.1%へ大幅に上方修正しました。これは「アジア四小龍」のトップであり、中国をも上回るレベルです。

台湾の輸出額は過去最高を更新し続けているだけでなく、雇用も25年ぶりの高水準に達しています。株価指数は6ヶ月連続で上昇し、過去最高値の27,301ポイントを記録しました。その時価総額は3兆米ドルを超え、世界8位の株式市場となりました。外貨準備高も初めて6,000億米ドルの大台を超え、過去最高を記録しました。

逆境にあっても決して諦めず、挑戦を重ねるごとにさらに勇敢になる。これこそ、台湾の人々が共に築き上げてきた成果です!どうぞ互いのために拍手を送りましょう!

こうした目覚ましい経済成果は、台湾の半導体産業、そしてICTや電子部品といった関連産業のリードによって実現した輝かしい記録です。これらの産業がグローバルサプライチェーンにおいて優位な地位を築いているのは、長年にわたり蓄積されてきた技術力と製造力、ユニークなビジネスモデル、そしてサイエンスパークの運営といった政府の主要政策によるものです。これらは数十年にわたる共同の努力によって築き上げられた重大な産業の成果であり、すべての台湾の人々にとっての財産です。

総統としての私の使命は、これらの貴重な財産を守り、台湾ないしは世界の産業や経済発展のために役立て、台湾の人々と世界の人々の生活をより良くすることです。これは台湾が進むべき方向でもあります!

もちろん私たちは、変化する国際情勢の中でもたらされる各種困難な挑戦が、様々な産業や分野、そしてバックランドが違うエスニックグループに対して与えるリスクを決して無視しません。

台湾の経済発展を牽引してきた多くの隠れたチャンピオン、従来型産業、そして中小零細企業は、デジタルトランスフォーメーションとネットゼロ転換の圧力に直面しています。多くの労働者は、AIの波が押し寄せる中、雇用機会、賃金、物価や生活費などについて懸念と不安を抱えています。農業従事者もまた、農村人口の高齢化と市場開放の影響に直面しています。

政府は、これらの課題が国民一人ひとりに与える影響を決して軽視しません。従来型産業、中小零細企業、給与所得世帯、そして農漁民を全面的に支援することは、私たちの責任です。

そのため、政府はすでに930億元規模の米国関税対策を打ち出し、企業、労働者、農漁民が困難を乗り越えられるようサポートしています。また、毎年百億元規模の予算を投入して、中小零細企業がAI(人工知能)を導入し、デジタル化とネットゼロ化を進め、課題に対応できるよう支援します。従来型の工作機械、ねじ・ナット、そして比較的に苦しい立場にある個別の産業についても、競争力の向上と市場拡大を積極的に支援するための対策を提案します。

国民の皆さん、「変化の時代はチャンスの時代」でもあります。台湾の経済パフォーマンスは世界が認めるところです。グローバルサプライチェーンにおける私たちの重要な地位は揺るぎないものであり、ましてや代替できるものはありません。

変化に直面しながらも、私たちは疑念を抱いたり躊躇したりすることなく、チャンスを捉え、大胆に前進しなければなりません。現状に甘んじて歩みを止めたり、過去に後退したりするのではなく、より積極的に、世界に向けて前進しなければなりません!確かな台湾は、不確実な世界において、重要で頼りがいのある、安定した力となるでしょう!

今後、私たちは3つの大きな戦略を実践し、中華民国台湾の競争の優位性を確保します。

第一に、投資を拡大し、台湾に深く根を下ろします

台湾への投資を強化するプログラム「投資台湾三大方案」は大きな成果を上げ、これを利用した対台湾投資額は2.5兆元を超え、16万人分以上の雇用を創出しました。行政院は7月、このプログラムを2027年まで延長することを承認しました。適用する産業を拡大したほか、世界の全ての台湾企業や外資系企業にも対象を拡大しました。政府は投資環境の改善にも引き続き取り組み、新たな融資枠を7,200億元に引き上げ、台湾への投資誘致を強化します。これにより、1.2兆元の資金を引き付け、8万人分の雇用が創出される見込みです。

良い仕事があれば、良い暮らしも必要です。政府は「1兆元規模の投資による国家発展計画」を打ち出しています。これは、官民連携の革新的な方法により、民間セクターがその潤沢な資金を公共建設へ投入することを奨励し、建設資金の規模を拡大するものです。また、全国の地方自治体が同時に水道、電力、住宅、教育、医療、文化、観光、交通といった主要インフラ整備を推進し、地域住民の暮らしや娯楽のニーズに応えます。産業の発展と生活圏の相互補完を図ることで、「バランスの取れた台湾」という目標の実現を目指します。

第二に、諸外国との経済貿易協力を深め、世界市場を開拓します

今年、台湾と英国は「貿易強化パートナーシップ協定」の枠組みの下、「投資」、「デジタル貿易」、及び「エネルギーとネットゼロ排出」の3分野の協定に署名しました。これは、台湾と英国の経済貿易関係が新たな節目を迎えたことを意味します。高水準の国際貿易規範に対する双方のコミットメントが示されるとともに、科学技術や先進製造業といった戦略的産業で双方が協力するための基盤が築かれました。

今後も台湾は互恵互利の原則を堅持し、より多くの友好国や同盟国と二国間の経済貿易協力協定を締結していきます。また、米国との関税交渉にも積極的に取り組み、合理的な関税率の実現を目指し、米国の対台湾貿易赤字の解消に努めます。さらに、台湾と米国の産業協力を深化させ、台湾の経済発展を世界と結び付け、大きく前進させていきます。

第三に、台湾を守る産業クラスターを構築し、台湾の産業の実力を強化します

デジタル時代の到来に対応するため、私たちは「AI新10大建設」を推進する必要があります。台湾を世界で5本の指に入るコンピューティングセンターの一つに押し上げるとともに、量子技術、シリコンフォトニクス、ロボットという3つの基幹技術の研究開発に積極的に投資します。さまざまな業界・企業でAIツールの導入を進め、各分野へのAIの応用を促進し、台湾が全面的にスマート化の時代に邁進し、世界の技術開発において主導的な地位を維持できるよう支援します。

私たちはまた、台湾を「アジアの資産管理センター」とすることを目指します。台湾に百兆元規模の資金を留めるだけでなく、外資による対台湾投資を誘致し、金融産業の発展を促進し、質の高い雇用を創出することで台湾を強くします。

バイオ医薬産業は国の主要産業です。これはすでに「国家希望プロジェクト」にも取り込まれ、保健、予防、診断、治療、ケアを網羅するプレシジョン・ヘルス(精密保健)の発展によって、国の長期的な競争力を高め、すべての人々の健康と福祉の増進に努めています。

来年には「国家感染症データベース」が完成します。台湾はこれからもバイオテクノロジー分野において各国との連携を強化していきます。政府は「スマートヘルスケアイノベーション・起業への投資計画」に100億元の予算を計上して、より多くの企業にイノベーションの研究・開発への投入と投資拡大を促し、バイオ医薬産業を年間生産高1兆元規模の産業へと成長させ、台湾を守るもう一つの産業クラスターに育てます。

国民の皆さん、「台湾はすべての台湾人の台湾」です。どれほど経済が好調であっても、この土地にいる誰一人として見過ごされるべきではないことを、私たちははっきりと理解しています。経済発展の成果は国民全員で享受しなければなりません。「良い数字」を「良い日々」に変えなければなりません。一人も取り残していけません。

だからこそ、国民の健康を守り、若い人材を育成し、若い世代により良い環境を提供し、若者世帯を支援することに、政府は大きな責任があるのです。今年から「健康台湾深耕計画」がスタートしました。これは、医療環境システムの全面的な向上だけでなく、より質の高いヘルスケアサービスをすべての人々に提供することを目指すものです。同時に、政府に「運動部」(スポーツ省)が正式に設立されました。これは、国民全員を対象にしたスポーツの促進や、競技スポーツ、プロスポーツにとって新たな時代を切り開くものです。また、すべてのアスリートが国から全面的な支援を受け、国際舞台で夢を追い求め、国に栄光をもたらせるようにします。

さらに、若い世代を支援するため、高校・職業学校の授業料全額免除を推進するほか、私立の大学や高等教育機関で学ぶ学生に対して年間3.5万元の授業料およびその他の諸経費補助を行います。また、15歳から30歳までの若者が海外で夢を追いかけることを支援する100億元基金プロジェクトもすでに始動しています。

それだけではありません。政府は賃貸住宅に住む人々の家賃補助として年間300億元を提供しています。来年からは、賃貸住宅に住む単身世帯で年収62.6万元以下、4人家族で世帯年収164.1万元以下、3世代同居で世帯年収212.45万元以下の場合、総合所得税が免除されます。

私たちは若い子育て世帯へのサポートも強化しています。「0歳から6歳までの子育て支援政策2.0」の推進により、育児手当と託児補助金の増額に加え、来年からは出産補助金の引き上げにより、子ども1人を出産するごとに政府からもらえる補助金が10万元に増えます。

高齢者の皆さんもご安心ください。来年から「長期介護政策3.0」が実施されます。政府は、すべての高齢者がより便利で包括的なケアを受けられるよう、全力で取り組んでまいります。

国家の主人であるすべての人々、つまり子どもであれ若者であれ、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんに至るまで、誰もがより良いケアを受け、より自信を持って未来に向かえるようにすること、それが私たちの目標です!

今年は第二次世界大戦終結80周年の節目でもあります。

第二次世界大戦は、決して遠い過去のことではありません。かつて侵略者の野心は、人々に甚大な苦しみをもたらしました。現在も、権威主義は拡大を続け、国際秩序は深刻な挑戦に直面しています。台湾海峡、東シナ海、南シナ海における地域秩序、さらには第一列島線全体の安全保障が、いずれも深刻な脅威にさらされています。

民主的な台湾は、インド太平洋における平和と安定の中心です。国際社会の責任ある一員として、現状維持に努め、台湾海峡の平和と安定を守り、地域の繁栄と発展を促進していきます。

私たちはまた、中国が大国としての責任を果たし、国連総会第2758号決議と第二次世界大戦に関する歴史文書の歪曲を停止し、武力や威圧による台湾海峡の現状変更を断念し、私たちと共にインド太平洋地域の平和と安定を守るよう期待しています。第二次世界大戦を振り返ると、私たちは誰もが戦争の苦しみと侵略の痛みを経験しました。私たちはそこから教訓を学び、この歴史的な悲劇を決して繰り返してはなりません。

第二次世界大戦の結果は、「侵略は必ず失敗し、団結は勝利する」ということを私たちに教えてくれました。平和は実力によって実現されなければなりません!私は台湾の人々と国際社会に対して宣言します。年内に防衛費に関する特別予算案を提出します。また、来年度、私たちの防衛費はNATO基準でGDPの3%を超え、さらに2030年までにGDPの5%に引き上げることで、国家を守る決意を示します。

私たちは決して、やみくもに防衛費を増やすわけではありません。敵の脅威に対応するという明確な必要性があります。それは国防産業を発展させるための原動力にもなります。新たな防衛費を通じて、我々は3つの大きな目標を達成します

第一に、「台湾の盾」(T-Dome)の開発を加速し、多層防御、高度な警戒態勢、効果的な迎撃能力を備えた厳密な防空システムを構築し、台湾の人々の生命と財産を守るための防護網とします

第二に、ハイテクとAI技術の導入と統合を強化し、インテリジェントな防衛・作戦システムを構築し、非対称戦略の抑止効果を強化します

第三に、国防に関するイノベーションへの投資を継続し、先進国の軍需産業と連携することで、国防と軍需産業の両方の力を強化します。台湾での研究開発、設計、生産・製造を通じて台湾企業によるサプライチェーンを構築することで、産業の高度化を加速し、軍備の強靭性を高め、防衛産業の能力を向上させることができます。ひいては友好国から信頼される安全保障のパートナーとなり、共同でレッドサプライチェーンを排除し、自由民主主義国家のために防衛面での信頼を築き、自由と民主主義の価値を守るための強固な防衛線を構築することができるでしょう。

私たちは実力によって平和を守る決意をもっています。実力は軍事力だけでなく、社会全体の強靭性によっても得られると固く信じています

過去1年間、私たちは「総統府全社会防衛強靭性委員会」の努力を通じて、政府と民間、そして中央政府と地方自治体との間で、より強い連携を築くことができました。また、防災と防衛の両方の能力を統合し、軍と民間の連携能力を強化しました。私たちはこれからも市民を対象にした訓練、それにエネルギー、医療、情報通信ネットワーク、金融等の強靭性強化を継続し、総合的に様々な危機への対応能力を向上させていきます。

私は強調します。社会全体の防衛力の強靭化にはあらゆる努力が必要であることを。先月、私たちは全国民を対象とした安全のための最新版ガイドラインを発表しました。さまざまな自然災害、ひいては軍事侵攻など極端な状況を想定して、その対応を網羅したハンドブックです。今後、各家庭に順次配布する予定です。なぜなら台湾では全国民が参加し、自らを助け、人を助けることで、より大きな強靭性を生み出し、様々な課題に立ち向かうことができるからです。

国民の皆さん、過去1年間、私たちはさまざまな困難に直面してきました。しかし、台湾の人々は決して希望を捨てませんでした。私たちは危機が起こるたびに、数え切れないほどの台湾の人々が最前線に立って、愛する国家のために献身的に尽くす姿を見てきました。

先月だけでも、二つの感動的な出来事がありました。一つはニューヨークで国連総会が開催されたときのことです。多くの台湾出身者が自発的に寄付をしたり、募金活動を行ったりして集めた資金で、ニューヨークのタイムズスクエアに「台湾を国連に参加させよう」、「団結すればもっと良くなる」という広告を出しました。これは世界各国からニューヨークへやってきた人々の心を動かしました。

もう一つは、馬太鞍渓の堰き止め湖からあふれた水で大洪水が発生したあとのことです。多くの人々が長靴をはき、シャベルを手に何千キロも離れたところから集まりました。ひとえに花蓮の被災者が一日も早く元の生活に戻れるようにと願うボランティア、いわゆる「シャベル・ヒーロー」たちです。彼らは厚みのある重い泥をシャベルでかき分け、被災者たちが家に帰れるよう助けました。それは一筋の希望の光となって、すべての人の心を温かく照らしました。それだけではありません。それは、台湾の人々が危機に直面しても、並外れた大きな強靭性を示し、自分たちの国を守るという決意を持つことを証明したのです

この場を借りて、全国のあらゆる分野から駆け付けた災害救助のヒーローたち、海外からやってきた人々、復旧・復興のために尽力する軍、警察、消防、中央政府や地方自治体の職員たちに、私たちの感謝の気持ちを伝えましょう。

この自発的な、そして全国規模の動きは、世界でも類を見ないものです。世界中の人々はきっとこう記憶するでしょう。台湾、あの小さくて山々がそびえる国の、なんと愛にあふれ、なんと偉大なことかと!

これからも私は国家を率い、心を一つにして団結します。風雨にひるまず、困難を恐れることなく、より良い明日に向かって勇気をもって前進していきます

台湾、頑張れ!中華民国、頑張れ!中華民国台湾、頑張れ!

ありがとうございました。

私たちはあなたのプライバシーを大切にします。
当ウェブサイトは関連技術を使用し、より良い閲覧体験を提供すると同時に、ユーザーの個人情報を尊重しています。中央社のプライバシーポリシーについてはこちらをご覧ください。このウインドウを閉じると、上記の規範に同意したとみなされます。
64