南部・台南市の烏山頭ダムは、日本統治時代に日本人水利技師の八田与一が設計したダムとして知られる。ダムのそばには八田やその他ダム建設に関わった幹部が暮らした邸宅が復元、修復され、「八田与一記念園区」として整備されている。
八田は、中部から南部の複数の行政区にまたがるかんがい施設、嘉南大シュウの建設に尽力したことで知られる。かつて嘉南平原には水利施設が不十分で、農家は洪水や日照りなどに苦しめられていた。嘉南大シュウの完成で環境が改善されたことによって、安定した農作物の生産が可能になり、嘉南平原は不毛の地から沃野(よくや)に生まれ変わった。烏山頭ダムは嘉南大シュウ建設計画の最初の施設として造られた。 (シュウ=土へんに川)
記念園区内にある邸宅は4棟。八田与一の邸宅は復元されたものだが、その他3棟は当時の建物を修復した。現在は週替わりで順番に各邸宅の内部が公開されている。
担当者によると、記念園区を訪れる日本人は多く、週末のこの日は夕方までに100人近くの日本人客が来園したという。
烏山頭ダムは1920年に建設工事が始まり、1930年に完成した。現在、ダム一帯は風景区として整備され、散策やキャンプが楽しめる場となっている。
烏山頭ダム風景区そばには、八田与一と妻・外代樹(とよき)夫人の深い夫婦愛を記念したスポットもある。「恋占石」と呼ばれるこの場所は恋人の聖地にもなっており、多くのカップルが恋の成就を願って訪れるという。(名切千絵)