「ここは最果て夢も還るよ ああ、懐かしき初恋の四重渓湯の郷⋯」と、台湾在住の日本のシンガーソングライター馬場克樹さんがギターを弾きながら歌ってから、傍にいる台湾の”流し”歌手阿家(A-Ga、本名:林助家)が台湾語で恆春民謡風に「思[口阿] 想起 懐念四重渓 出名是美人湯」と続けた。台日混成デュオバンド「八得利」(バッテリー、Battery)が9月14日夜に台北市で行った音楽ライブの模様だ。
馬場克樹さんは台湾で「バーバー桑」というニックネームを持つ。1963年宮城県仙台市生まれ。1989 年北海道大学文学部文学科(中国文学専攻課程)卒。国際交流基金に20年余り勤務し、国際文化交流のスペシャリストとして北京、シドニー、台北(日本台湾交流協会に出向、文化室長)に駐在。2011年に退職後、2013年に台湾で蒲公英(タンポポ)音楽交流株式会社を設立した。現在、「ババ[辛力辛]タク(Baba Band)」、「八得利」などのバンドを率いボーカルを担当している。(バー=父の下に巴、タク=卓の旧字体)
ライブで披露した温泉の歌は6曲。馬場さんはあと2曲ぐらい書きためており、今後、礁渓温泉、、知本温泉、谷関温泉などの曲も創作する予定。10曲になったところでアルバムをリリースしたいと考えているそうだ。馬場さんは「目標としては、日本語に台湾語、中国語の要素も入り、日本の人にも台湾の温泉の素晴らしさを知ってもらいたい」と熱く語る。
仕事を辞め、一時期日本に帰国したものの、再び台湾に戻ってきた。台湾映画「逆光飛翔」(光にふれる)のエンディング主題歌を手掛ける機会を得たことをきっかけに、本格的に音楽をやってみようと思ったのだという。
馬場さんは俳優、フリーライターとしても活躍している。フリーライターとして、エバー航空の機内誌「enVoyage」、台湾生活情報月刊誌「な~るほど・ザ・台湾」、多言語ウェブ雑誌「nippon.com」等でのコラムを執筆。「文書を書いて、台湾のことを知らせる人がいっぱいいるけど、歌を通じて、しかもローカルに根を下ろした形のバンド活動を通じて、台湾の魅力を伝えられるのは僕と阿家ぐらい」馬場さんは胸を張る。
作曲、作詞もこなす流し歌手、 阿家は1977年、台湾の中部彰化県生まれ。20歳ごろに台北に上京した。馬場さんによると、コンビのメリットは「私が一人でギターを弾きながら歌うのは陽春麺(台湾風かけそば)のようなものだけれど、阿家がいろんなものを入れてくれたら豪華な五目そばになる」。阿家も「二人のコンビは千軍万馬のよう」と笑いながら言った。
阿家は10年間郵便配達の仕事をしたことがある。仕事のかたわら、土曜、日曜に台北県(今の新北市)のレストランで、流しをしていたのだという。2008年の大ヒット台湾映画「海角七号 君想う、国境の南」で、郵便配達をしながらバンド活動をしていた主人公「阿嘉」(A-Ga)の姿とどこか重なる。
馬場さんとコンビを組んだ感想について、「最初、馬場さんの仕事の仕方、几帳面できっちりしているところが、あまり馴染めなかった。でもそのうちに、
(楊明珠)