緑島は、戒厳令下にあった台湾の悲痛な歴史の面影をとどめている場所でもある。島の北東部に位置する「緑島人権文化園区」では、長期の戒厳統治によって台湾の人々の人権が抑圧され、侵害された歴史を伝えている。
台湾は国民党政権により1949年5月から1987年7月まで戒厳令が敷かれ、白色テロと呼ばれる恐怖政治が続けられた。逮捕された政治犯は1950年代初め以降、緑島の強制労働キャンプに収容され、洗脳や過酷な肉体労働を強いられた。
文化園区は当時使用された2カ所の監獄跡地(荘敬営区・国防部感訓監獄)を整備・改築して誕生したスポット。当時の様子を再現した展示などが行われている。
荘敬営区にある新生訓導処展覧エリアは、当時編成された3つの大隊と12の中隊のうち、第3大隊の営舎を再建した建物。就寝前の牢屋の様子を再現した部屋の展示のほか、受難者の紹介、受難者のインタビュー映像上映などが行われており、当時この場所に収容されていた人々の苦しみなどがより身近なものとして感じられるようになっている。
石切りや石運びなど、受難者に長年課せられた重労働を紹介する展示も。
被収容者が強制労働の一環として、サンゴ礁から石を切り取って建設した克難房。倉庫や農具置き場、豚舎として使われた。この建物は2007年に修復された。
緑洲山荘(国防部感訓監獄)は政治犯と思想犯を収容するため、1972年に建設された監獄。完成後には各地の軍事監獄で服役中の思想犯がまとめて移送され、感化教育と思想改造が進められた。人権侵害と政治事件の受難者の集中キャンプとされ、1987年の戒厳令解除を受けて廃止された。
同所は四面を高い塀に囲まれており、壁には各種の愛国スローガンが書かれている。
2カ所の収容所はすでに廃止されたが、島には現役で使用されている監獄もある。最も矯正が難しい受刑者が収容され、台湾で最高レベルの厳しい管理が行われている。
現在ではリゾート地として、夏になると多くの人で賑わう緑島。だが、キラキラとしたイメージの裏に、暗い影を潜めているのもまた事実だ。歴史を知ると、島の美しい風景の捉え方もまた変わってくる。文化園区を見学すれば、緑島に対する理解がより深められることだろう。