(青森中央社)交通部観光署(観光庁)の統計によれば、今年1月から8月までに台湾から日本を訪れた人は409万6116人に上った。これは台湾の国・地域別出国者数で最も多い。一方、同期間に台湾を訪問した日本人旅行者は79万4865人にとどまった。台湾の観光業界関係者は、台湾のインバウンド(訪台外国人客)市場復活には日本人客数の回復が必要だとしつつ、観光インフラ整備の出遅れや政府の観光戦略における長期的視点の欠如などを課題に挙げている。
台湾は今年、訪台客1000万人を目標に掲げている。だが、先月末現在での外国人訪台客数は600万人余りとなり、年間では750万人程度にとどまる見通しだ。
新型コロナウイルス流行前と比べると、現在の訪台日本人客数は6割程度の水準となっている。星野リゾートの台湾総代理店、湯桂禎国際旅行社の湯桂禎董事長(会長)は「少なくともまずインバウンドの消費額を回復させるには、失われた日本人客を取り戻さなければならない」と指摘する。台湾と日本の文化は共感を呼ぶため、日本人客は台湾観光を支える潜在市場になるだろうと湯氏。今後、円高になった時を見据え、台湾は日本人客を迎え入れるための準備を整えておく必要があるとの考えを示した。
台湾観光を巡っては、宿泊料金の高さやコストパフォーマンスの低さ、観光地の独自性不足などに対して国内で批判の声が上がる。日本の旅行市場に詳しい台湾の観光業界関係者は、台湾の国内旅行はコロナ下での黄金の改造期間を逃したと指摘する。日本では多くの観光関連のグループ企業がコロナ下で休むことなく施設の向上やハード面の改築、ソフト面の改善などを行っていたのに比べ、台湾の国内業者は嵐が過ぎ去るのをただ待っていたとし、「この点はかなりもったいない」と話した。
またこの関係者は、日本の観光面での投資は少なくとも、3年、5年といった長期的な視点で行われているのに対し、台湾の業者はすぐに効果が出ることを期待していると分析。政府の観光政策についても「今年は高山、来年はサイクリング、再来年は鉄道」と毎年テーマを変えるようなお祭り式にしてはならないと批判する。「少なくとも10年間PRし続けてようやく外国人は覚えてくれる。四季折々の魅力を打ち出してこそ、閑散期にも旅行者を獲得できる」と語った。
湯氏は、台湾が観光を発展させるには「幅広さ」と「細部」を兼ね備える必要があると話す。政府が「統合者」の役割を果たし、南から北まで系統的、長期的に包括的な計画を行うことが必要だと述べた。