(北京、台北中央社)乗組員全員が中国人の貨物船「宏泰58」(トーゴ船籍)が今年2月に南部・台南沖で起こした海底ケーブルの切断について、中国で対台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室(国台弁)は24日、台湾人2人が密輸のために裏で貨物船を操っていたとの主張を発表した。これに対し、台湾で対中政策を担当する大陸委員会や、同船を拿捕(だほ)した海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)は同日、相次いで中国側を批判した。
貨物船は2月22日夜から台南沖に停留していた。25日未明、台湾本島と離島・澎湖を結ぶ海底ケーブル「台澎3号」が損傷したと通報があり、海巡署の巡視船艇がいかりを下ろしていた貨物船を拿捕し、乗組員を送検していた。6月には船長に対する裁判が行われ、みだりにいかりを下ろして航行してケーブルを損傷したとして懲役3年が言い渡された。
船長はすでに収監されている。
国台弁の報道官は会見で、台湾の民間人2人が貨物船を操って密輸を行っていたとした上で、民進党政権が両岸(台湾と中国)の対立をあおろうとしているなどの主張を展開した。
また山東省威海市の公安当局も12月24日、中国側が貨物船を操っていたとする台湾人2人に関し、手掛かりの提供などを求める報奨金付きの懸賞広告を発表した。
大陸委員会は同日、中国人船長が故意にケーブルを損傷させた犯罪の事実や証拠はいずれも明確であり、司法機関が法に基づいて捜査を終わらせていると説明。中国側が懸賞広告で台湾の住民に関する情報提供を求めたことについて、中国共産党は台湾を管轄する権利を有していないと強調した。
その上で中国公安当局に対し、具体的な証拠があるのであれば台湾側にも提供し、両岸の越境犯罪防止に協力すべきだと指摘した。
海巡署は、中国側が今になって懸賞広告を出すなどの政治的操作を行い、是非を混同して焦点をずらし、両岸の対立を高めようとしていると批判。厳正に反論し、強く非難するとした。