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第30回金曲奨 ジョリン・ツァイが年間楽曲・アルバムの2冠

2019/07/11 04:34
受賞スピーチをするジョリン・ツァイ(左2)
受賞スピーチをするジョリン・ツァイ(左2)

台湾で最も権威ある音楽賞「ゴールデン・メロディー・アワード」(金曲奨)は第30回授賞式が6月29日に台北アリーナ(台北市)で行われ、受賞者が発表された。

 今年のノミネートはビッグネームが少ない印象で、注目される中国語部門ではアルバム賞、歌手賞ともに新鋭のミュージシャンが目立った。

 そんな中、今年でデビュー20周年を迎え、台湾女性歌手としてトップレベルの人気を誇るジョリン・ツァイ(蔡依林)が前評判通りの強さを見せた。4年ぶりにリリースしたオリジナルアルバム「Ugly Beauty」で年間アルバム賞、同アルバム収録曲の「●瑰少年」で年間楽曲賞と2冠を制し、今年の最多受賞者の一人となった。(●=王へんにのぶん) 年間アルバム賞は、中国語、台湾語、客家語、原住民語の各言語別アルバム賞候補作にイーソン・チャン(陳奕迅)の「L.O.V.E.」を加えた24作品の中から選ばれた。年間アルバム賞・楽曲賞はともに、その年を代表する作品に贈られる賞。審査員長のサンディー・チェン(陳珊ニー)は審査員全体の見解として、昨年の台湾社会の変化などを反映して哀傷を漂わせている作品が多かった中で、ジョリンのアルバムには「ハッピーな、人々を踊りに誘うような音楽によって悲しみを乗り越えよう」とするコンセプトが感じられたと説明。多くの人の共感を呼び、「今年を代表する一枚」との評価で一致したという。(ニー=女へんに尼)

 年間楽曲賞を受賞した「●瑰少年」は、ジェンダー差別によるいじめを背景に2000年に亡くなった当時中学生の葉永シさんを主人公にした楽曲。ジョリンがメイデイ(五月天)のアシン(阿信)と共同で詞を手掛けた。ジョリンは受賞スピーチで、「この歌は葉永シさん、そして、かつて『自分には機会が全くない、選択の余地がない』と思っていたみなさんに捧げます。自分を選ぶこと、自分を応援することを忘れないでください」と力強い眼差しで訴えた。(シ=金へんに志)

年間楽曲賞の受賞スピーチをするジョリン(左)、プレゼンターで、同曲の歌詞を共同で手掛けた阿信と抱き合って喜んだ(右)
年間楽曲賞の受賞スピーチをするジョリン(左)、プレゼンターで、同曲の歌詞を共同で手掛けた阿信と抱き合って喜んだ(右)

 多数ノミネートされていた新鋭アーティストの中で特に存在感を示していたのは男性シンガーソングライターのオジー(OZI)。オジーはファーストアルバム「OZI: The Album」で6部門にノミネートされ、新人賞を射止めた。(OZI のOはストローク符号付きが正式表記)

  米国生まれの22歳。作詞、作曲、編曲からミュージックビデオ(MV)の撮影、編集まで手がけるという多才ぶりとポテンシャルの高さが評価された。モデルで歌手のアイリーン・イエ(葉アイ菱)を母に持ち、授賞式でのスピーチの際にはアイリーンがスマホのビデオ通話で息子に祝福を送った。(アイ=王へんに愛)

  新人賞受賞者恒例のステージでは、大舞台にもかかわらず肩の力が抜けたパフォーマンスを披露し、大物の風格を漂わせた。

新人賞受賞後にパフォーマンスを披露するオジー
新人賞受賞後にパフォーマンスを披露するオジー
  中国語男性歌手賞はラップ歌手のLeo王(レオワン)が「無病呻吟有情抒情」で、同女性歌手賞は香港のサンディー・ラム(林憶蓮)が「0」で受賞。中国語アルバム賞には、女性歌手シーシー・スン(孫盛希)の「希遊記」が選ばれた。

 ▽日本人3人組「東京中央線」がインストアルバム賞受賞

  第30回金曲奨は昨年1年間に台湾本島と離島の金門、澎湖、馬祖でリリースされた音楽作品を対象としており、創作者の国籍は問われない。今年の金曲奨では日本人が複数ノミネートされ、3部門で候補になっていたバンド「東京中央線」がインストゥルメンタル部門アルバム賞を受賞する快挙を成し遂げた。

受賞後にプレスルームで写真撮影に応じる東京中央線の福島紀明(左1)、早川徹(左2)、大竹研(右1)とインストアルバム賞受賞作「Lines & Stains」に参加した台湾サックス奏者シェ・ミンイェン(右2)。今回の金曲奨では、アートディレクターの関山雄太が監督を務めた台湾4人組バンド、デカ・ジョインズ(Deca Joins)の「Go Slow」がミュージックビデオ賞に、音楽プロデューサーの荒井十一がスー・ユンイン(蘇運瑩)の「幻」で歌唱部門アルバムプロデューサー賞に名を連ねていたが、受賞は逃した
受賞後にプレスルームで写真撮影に応じる東京中央線の福島紀明(左1)、早川徹(左2)、大竹研(右1)とインストアルバム賞受賞作「Lines & Stains」に参加した台湾サックス奏者シェ・ミンイェン(右2)。今回の金曲奨では、アートディレクターの関山雄太が監督を務めた台湾4人組バンド、デカ・ジョインズ(Deca Joins)の「Go Slow」がミュージックビデオ賞に、音楽プロデューサーの荒井十一がスー・ユンイン(蘇運瑩)の「幻」で歌唱部門アルバムプロデューサー賞に名を連ねていたが、受賞は逃した
東京中央線の受賞後のコメント:(関連記事)日本人バンド・東京中央線が演奏部門アルバム賞受賞

 東京中央線は大竹研(ギター)、早川徹(ベース)、福島紀明(ドラム)の3人によるインストギタートリオ。大竹と早川は学生時代からの仲間、早川と福島も2000年に出会って以来の仲で、2014年に3人そろって台湾で初ライブを開催。のちにアーティスト名を「東京中央線」とし、作品作りやライブ活動を行っている。

 受賞作のジャズアルバム「Lines & Stains」は、かねてから付き合いのあった台湾のサックス奏者シェ・ミンイェン(謝明諺)を迎えて制作した。タイトルの「Lines」は「しわ」、「Stains」は「しみ」を意味する。大竹は「『おっさんでも楽しんでやっている』ということをほのめかしている」とタイトルに込めたメッセージを説明する。同作は前半は若い人でもわかりやすい、ジャズのフォームに習った曲を並べた一方、後半は「めちゃくちゃなことになってる」と解説する大竹は、「そういうものが賞を取れたことは僕としてはすごく嬉しい」と喜びを示す。曲は3人で出し合い、バランスもみんなで考えた。ミンイェンを含め4人の個性が詰まった、みんなで作った作品だからこそ、「思い入れはある」と感慨深げに語った。

 福島は「自分の好きなことだけを追求していくと万人に受ける音楽にはそんなにはならないと思う。でもそういう作品は好きじゃない。自分も楽しくて、聞いてる人もいいと思ってというそのバランスはすごく考えて作ったアルバム」と紹介する。

 大竹と早川の2人が台湾のエンタメ界の授賞式で登壇するのは初めてではない。2017年には台湾の映画賞「第54回ゴールデン・ホース・アワード」(金馬奨)で、サウンドトラックで参加した台湾映画「大佛普拉斯」がオリジナル映画音楽賞に輝き、受賞者の客家人歌手リン・シェンシャン(林生祥)と共に授賞式のステージに立った。早川は「(当時も)もちろん光栄だった」としつつ、「この賞(金曲奨)は完全に音楽にフォーカスが当たって、音楽をやる人とか曲とか、プロデュースしている人たちをセレブレイト(称賛)しようとする会だからやっぱり重みが大きい」と語った。

授賞式のステージで早川(左2)が英語で「台湾は素晴らしい国」とスピーチすると、客席から大きな歓声が上がった(写真=台湾テレビ提供)
授賞式のステージで早川(左2)が英語で「台湾は素晴らしい国」とスピーチすると、客席から大きな歓声が上がった(写真=台湾テレビ提供)

▽その他主要部門の受賞者・作品 

<台湾語>

アルバム賞:「西部」歌唱者リャオ・シーシエン(廖士賢)

男性歌手賞:アルドール・ホアン(流氓阿徳)「温一壺青春下酒」

女性歌手賞:ジョーイ・チャン(江恵儀)「露螺」

 <客家語>

アルバム賞:「落脚」 歌唱者ロー・スーロン(羅思容)

歌手賞:ヤン・シューユー(楊淑ユ、吉那缶子)「理所當然」

 (ユ=口へんに兪)

<原住民語>

アルバム賞:「斯瓦細格」 歌唱者Yawai・Mawlin(雅維・茉ネイ)

歌手賞:Yawai・Mawlin「斯瓦細格」

(ネイ=草かんむりに内)

 

バンド賞:ソニック(閃靈)「政治」

コーラスユニット賞:ザ・チェアーズ(椅子楽団)「Lovely Sunday 楽芙莉聖代」

(名切千絵)

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