(台北中央社)台湾全土にある「中正路」の道路名の変更を巡る問題で、行政院(内閣)は5日、中央政府として改称を全面的に推進する計画はないとの立場を示した。これに対し、台湾基進など複数の小規模政党などは7日、台北市内で記者会見を開き、行政院の判断は権威主義体制下で行われた政治弾圧や人権侵害の真相究明を目指す「移行期の正義」の価値を否定することになるとして、改称の推進を呼びかけた。
「中正路」はかつて一党独裁体制を敷いた国民党の蒋介石(しょうかいせき)元総統が「蒋中正」とも呼ばれることにちなんで名付けられた。内政部(内務省)は、中正の名が付く道路は台湾全土に311本あるとした上で、権威主義の象徴を排除する取り組みの一環として改称を進める方針を打ち出している。
この方針に国民党の関係者らは反発。また卓栄泰(たくえいたい)行政院長(首相)は5日、道路名の命名と変更は地方政府に権限と責任があると説明し、現時点では地方と住民の意思疎通が待たれるとの認識を示した。
7日の会見で台湾基進の王興煥(おうこうかん)党主席(党首)は、中正路の改称は空間に対する戒厳令の解除であり、都市の血管である道路を束縛から解放し、自由を取り戻すと改称の必要性を強調。卓院長の発言は改称の責任を地方や地元住民に押し付けており、台湾が長年懸命に取り組んできた民主主義の価値に申し訳が立たないと語った。
台湾緑党の王彦涵(おうげんかん)氏は、改称は社会が権威主義から抜け出せるか否かの試金石だとし、徹底的に民主主義を深めるべきだと主張。小民参政欧巴桑聯盟の沈佩玲(しんはいれい)広報担当も、中央と地方は移行期の正義に対する連携メカニズムを構築すべきだと訴えた。
時代力量の鄭宇焱(ていうえん)広報担当も、行政院は移行期の正義の約束を守るよう要求。519行動組合の呂昱(りょいく)氏は、頼清徳(らいせいとく)総統は移行期の正義の重要性を何度も訴えているとした上で、「行政院長は総統の理念に反するのか」と卓院長を批判した。
また会見の出席者らは台北市の行政院庁舎前で「中正路は要らない」、「坊主頭の蒋介石は敬わない」などとシュプレヒコールを上げた。