台湾在住の日本人作家、片倉佳史さんのハードスケジュールを見たら、彼がなぜこんなに台湾のことが好きなのかを不思議に思う。台湾の文化、歴史などを紹介する講演を日本・台湾各地を飛び回って年40回もこなしている日本人はほかにいるだろうか。
片倉さんはこの1年間に台湾と日本で、約40回講演した。そのうちの約15回は、修学旅行向けで、日本人学生が事前に台湾について学ぶためのものだったそうだ。
10月4日の午後にも高校生向けの講演を控えていた片倉さんは、同日午前、中央社のインタビューに応じ、「今、日本から台湾にやってくる修学旅行の学生が1年間で3万人もいる。次世代の台湾ファン、台湾の理解者になってくれば、すごくいい」と意欲的に語った。
妻の真理さんもフリーランスのライターで、台湾に関するガイドブックや書籍の執筆、製作に携わる。著書には台北生活情報誌「悠遊台湾」、「在台湾 遇見一百分的感動 片倉真理旅の手記」などがある。
ちなみに、台湾を訪れる日本人学生たちに台北のことを理解してもらおうと台北市政府が「高校生・大学生のための台北満喫ハンドブック」を発行しているが、これは片倉夫妻が二人三脚で作製したもの。台湾の基礎知識、台北のミニ歴史講座、台北の歴史建築と産業遺産などを紹介している。
いま、日本の出版業界、メディアなどが良く台湾の特集を出している。空前の「台湾ブーム」が来ていると思われる。
このことについて、片倉さんは「ブームはいつか必ず廃れるんだ。ブームって、終わった後は必ず悪いことしか残らない。何とかできないか」という気持ちが膨らんで、「台湾を勉強する面白さ、台湾を知る面白さを伝えることをお手伝いできないか」という目標が生まれたと話している。
「台湾を学ぶ会」の内容は、台湾の日本語世代の人に話を聞いたり、戦後台湾から引き揚げた湾生たちの話をしたりするほか、台湾について特別な知識を持つスペシャリストなどを集め、片倉さんが聞き役になって勉強するというスタイルを採っている。
3回目となる9月22日には、ゲストの張文芳さんが台湾の歴史、戦争体験、台湾言語事情等を語った。参加者の中には日本メディアの台北特派員もいた。
4回目は10月11日に大阪で開かれる予定。ゲストは無針バリ治療の創始者、楊應吟さん。台南の話や学生時代、戦後の台湾、そして現在の日本に何を感じているかを語る。
これまでの勉強会は毎回満員。「全部満員ということに感謝。それだけ台湾は魅力的だということなんだ。もっと台湾の魅力を深く知りたいとか、勉強したいと思っている人は少なからずいるという事実を示している」と片倉さんは言った。
現在、「台湾を学ぶ会」は不定期開催だが、今後できれば、通訳を付ける形で、台湾人向けの勉強会もやり、対話を広げていこうと考えているそうだ。
「日本人は一方的に日本が台湾に何をしたかばかり見てしまうが、私はそれがおかしいと思っていて、台湾と接触することによって、日本人は何を学んだかという視点を常に持っていたい。あとは、台湾を勉強することで、見えてくる日本というものがあるんです。同じく、台湾の人は日本を勉強してくれることによって、台湾とは何なのか、気づくことがある。お互いの情報交換をどんどんしていけたらいいなあ」と、片倉さんは力説した。
「歴史建築を案内したり、日台のかかわりを紹介したりする。台湾の人は日本統治時代の50年に何を考えていて、どう生きていたかを取材して、それを日本人に伝えることが一番大切だ」と片倉さんは真剣な表情で語った。
(楊明珠)