※この記事は、中央社のロサンゼルス駐在記者、林宏翰による特集記事「旅外現場 台灣好手在異鄉追夢旅程」を日本語に編集・翻訳したものです。
「旅外」は、中国語で海外で学問やスポーツ、仕事に挑戦することを表す言葉。「旅外」するアスリートたちは大勢の期待を背負い、成功すれば「台湾の光」となる。留学と同じで、海外での経験さえあれば、自身の経歴にとってプラスになると思われがちだ。だが「旅外」がどのようなものなのか、その苦楽は結局のところ、経験した者にしか分からない。
記者として米国に派遣されている私も、「旅外」をしている身だ。ニュースの現場に足を運び、第一線で「旅外」の気持ちを体感している。これまで、球場のベンチで選手と言葉を交わしたり、ゴルフ場のコース上でクラブを振るプレーヤーを撮影したりしてきた。
「旅外」は、家族から遠く離れることでもある。2019年9月、クリーブランド・インディアンス(現ガーディアンズ)でプレーしていた張育成選手(当時24歳)がマイナーリーグでの6年の時を経て、ついにメジャーで初ホームランを打ったあの日、彼はホームランボールを死んだ父親にささげると語った。笑いの中に涙も浮かべていたのが、6年たった今でも忘れられない。
今年3月、私はドジャースの春季キャンプで台湾出身の18歳、柯敬賢選手を取材した。柯選手はタトゥーが入った右腕を見せ、3年前に亡くなった父親の名前も彫ったのだと教えてくれた。そして、米国に来て以来、よく父親が夢に出てくると明かした。「一番好きだった服を着て、ホテルの下に立って私に笑いかけているんです」。
「旅外」11年目のゴルファー、徐薇淩選手は、これまでに乗り越えた最大の挑戦は孤独感と移動の疲れだと語る。女子プロゴルフに挑む徐選手は、一人で世界各国の選手と競い合うだけでなく、移動のこまごまとした手続きをしたり、心理的な落ち込みに対処したりする必要がある。
また、マイナーリーグの選手は時に、バスに10時間以上も揺られて敵地への遠征に向かう。世界中を飛び回るゴルフ選手の移動の疲れも、ファンにはなかなか伝わらない現実だ。徐選手は、移動日はまるで都市から都市へと逃げ回っているようだと表現した。
「旅外」は、自身への挑戦でもある。同じく女子ゴルファーの銭珮芸選手は、自身の慣れ親しんだ居心地のいい環境を離れるのは、必ずや大きなストレスに直面するとした上で、ストレスに向き合うたびに、自分には何が必要なのかを知ることができると語った。調整を重ねることで、少しずつ自分を成長させていけるのだという。
奮闘、挑戦、そして夢の実現でもある「旅外」。海外で奮闘する台湾のトップアスリートたちにとっては、先人が残した目標もモチベーションとなっている。スポーツはただ単に娯楽というだけではない。忘れられがちだが、ある種の文化の蓄積でもある。私たちが台湾のアスリートの活躍を見られるのは、環境の底上げがあるからこそだと言える。
駐在記者としてこれらのアスリートたちと向き合う機会に恵まれ、彼らの成績の裏にある苦闘や粘り強さを見ることができた。一人一人の旅路は異なるが、彼らには共通の精神がある。自身のプロアスリート人生のために努力するのと同時に、台湾のスポーツ文化を伝承し、次世代の台湾人が夢を追うのを激励しているのだ。