中部・台中市で11月3日に開幕した「台中フローラ世界博覧会」(台中花博)。「花で再発見するGNP」をテーマに、外埔、后里、豊原の3つの会場でそれぞれ「Green=緑、生産」「Nature=自然、生態」「People=人文、生活」をコンセプトとした展示を行っている。記者は11月上旬、主会場の后里会場のうち、日本統治時代に建てられた「后里馬場」を整備して設置された「馬場園区」を訪れた。▽后里馬場、馬場の施設を活用 日本統治時代建設の施設も
馬場園区内には日本時代の厩舎や事務所などが保存されている。厩舎の一部には実際に馬が配置され、当時の面影をほのかに感じさせる。
后里馬場は台湾に残る数少ない日本統治時代の馬場であることから、市の文化景観に指定されており、敷地内の施設のうち、日本統治時代に建てられた第一、第二馬厩、場本部(事務所)、記念碑は市定古跡、戦後の場長宿舎は歴史建築に登録されている。
馬場園区には、馬に触ったり、一緒に写真を撮ったりできるスポットのほか、餌付け体験や乗馬体験のエリアもある。馬術競技場では、馬術のパフォーマンスが披露され、記者が訪問したのは平日にもかかわらず、ほぼ満席となる盛況ぶりだった。
▽日本の地方自治体も多数出展
参観経路は8の字を描くように配置されており、花の小道を歩いているかのような気分にさせられる。∞(無限)の記号の形をイメージしており、生命や自然の循環、永遠などを象徴しているという。
馬場園区では、日本の地方自治体が出展したブースも多く目に留まった。花舞館で開催されていた国際室内花卉コンペティションには、日本から大分県や鳥取県、沖縄県、名古屋市、駒ヶ根市、群馬県などが参加。地域の特色、工芸などを融合させ、来場者に魅力をPRした。コンペは11月18日で終了し、全体的配置部門で日本花き輸出協議会が金賞、切り花部門で愛媛県が金賞、駒ヶ根市と群馬県がそれぞれ銀賞に輝いた。
屋外には、姉妹温泉の交流展として、岐阜県下呂温泉や北海道登別温泉、大分県由布院温泉など日本各地の温泉を紹介するブースもあり、台中市と日本各地の交流の活発さを感じさせた。
▽故宮博物院の名品「翠玉白菜」、花博に
后里馬場園区の会場は道路を挟んで后里馬場エリアと花舞館を中心としたエリアの2つに分かれている。会場内はとても広く、わずか2時間程度の滞在では駆け足にならざるを得ないほど。后里馬場エリアは馬との触れ合いがメインになっており、花の展示は少ない。ランなど花の展示は主に花舞館にまとめられている印象だった。ただ、花舞館は平日でも昼を過ぎると多くの来場者でごった返していたため、ゆっくりと見物するなら早めの時間に訪れたほうがいいだろう。
花博は后里馬場森林園区、外埔園区、豊原葫蘆トン公園でも開催中。2019年4月24日まで。(トン=土へんに敦)
▽花博会場の周辺地域に足を伸ばして
花博の主会場がある后里区は台中市の北端に位置する。車で1時間ほど山地に向かって走らせた場所には温泉地の谷関があり、花博観光に合わせて温泉を楽しむこともできる。記者は交通部(交通省) 参山国家風景区管理処が実施したメディアツアーで谷関を訪れた。
谷関温泉は日本統治時代に開発が進んだ温泉地で、一部温泉旅館は脇の歩道にちょうちんを飾るなどして日本の風情を演出している。最近では日本の星野リゾートが泉質の良さと湯量の豊富に目をつけ、リゾートホテルを建設したことでも注目が集まっている。弱アルカリ性炭酸泉で、美肌効果が期待できるという。谷関の多くのホテルでは、室内で温泉を楽しめる。記者が宿泊した「神木谷假期大飯店」 では、蛇口をひねるとすぐに硫黄の強い匂いが漂ってきた。関連記事:谷関に星野リゾートの「星のや」 2019年開業の見通し
谷関は「明治温泉」、「生男湯」などとも呼ばれる。明治天皇が訪れ、その後に子を授かったのが由来だとされているが、実際には明治天皇は台湾には訪問していない。
谷関の観光案内所は台湾初の温泉をテーマにした案内所として整備され、谷関だけでなく、台湾全土の温泉やその特徴を紹介している。
谷関の近くにある「松鶴集落」にも立ち寄った。ここはかつては台湾原住民(先住民)タイヤル族の集落で、日本統治時代には、付近にある台湾3大林場の一つ「八仙山林場」で働く人々が暮らした。集落内には、当時のヒノキ造りの宿舎が保存される。2004年の豪雨で起きた土石流などによって集落は甚大な被害を受けた。今でも一部の建物は土石流に埋まったままにされ、当時の被害の深刻さを感じさせた。
台中市内の宿泊施設では花博開催に合わせ、特別プランなどを用意。食用花などを使用した食事メニューなども提供し、花博商機の獲得に力を入れている。
(名切千絵)