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台湾の住民守った旧日本兵題材の小説、台湾で出版 日本人作者「新たな文化交流に」

2024/04/24 15:41
台湾の人々を守って戦死した杉浦茂峰を描いた小説「展翅」の原作者菅野茂さん(右)と中国語版翻訳者の三木克彦さん=台南市で2024年4月22日、中央社記者中村充孝撮影
台湾の人々を守って戦死した杉浦茂峰を描いた小説「展翅」の原作者菅野茂さん(右)と中国語版翻訳者の三木克彦さん=台南市で2024年4月22日、中央社記者中村充孝撮影

(台北中央社)太平洋戦争中、日本統治下の南部・台南市の人々を守り戦死したとして、同市で祭られている旧日本兵、杉浦茂峰を題材にした小説「展翅」が、3月に台湾で出版された。作者の菅野茂さんは多くの人に読んでもらいたいとし、新たな文化的要素として、日本と台湾のさらなる交流につなげたいと話している。

海軍のパイロットだった杉浦は1944(昭和19)年、台南を空襲した米軍機を迎え撃つため、戦闘機で出撃したが、搭乗した機体が被弾。落下する中でも集落の人々が被害を受けるのを避けようと、最後まで畑や養殖池のある場所へ操縦し、命を落としたとされる。自らの命を犠牲に人々を守ったとして、杉浦は地元住民から尊敬を集め、71年、地元住民らが杉浦を祭る祠を建立。93年に飛虎将軍廟(びょう)として改築され、現在も祭られている。

小説は、戦前の台南市が舞台。現地の部隊に配属された杉浦を中心に、同僚パイロットとの友情や台湾人女性との恋愛模様を描く。また商業施設の林百貨や旧台南州庁(現台湾文学館)、武道場だった台南武徳殿など、日本統治時代に建てられ、現在も同市内で保存、活用されている建築物の描写もある。菅野さんは「台南は台湾の中でも(日本統治時代の)遺産が残っている都市」とした上で「読めばその時代の機能やどのような人たちが生活していたのかよく分かると思う」と、小説をきっかけに台日間の文化交流がさらに深まることを期待した。

中国語版の翻訳を務めた映画監督の三木克彦さんは、この小説をベースにした映画制作に着手している。「40年代のことは台湾でもあまり語られてこなかった」とし、「小説と映画で伝えていきたい」と力を込めた。菅野さんは「飛行兵同士の友情や部下を思う愛、杉浦さんの自己犠牲の人類愛を感じてほしい」と語った。

4月22日には、林百貨で出版を記念する会見が開かれた。台南市の葉沢山(ようたくさん)副市長は「杉浦さんの精神は、この本によって羽ばたき、世代を超えて伝えられていくだろう。この本には杉浦さんのだけでなく、台南という都市に対する菅野さんの愛が込められている」と述べた。

今後、日本でも日本語版が発売される予定だという。

(中村充孝)

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