(台東中央社)かつて漁船の上からもりを突いて魚を捕る突きん棒によるカジキ漁を営み、2017年に日本で公開されたドキュメンタリー映画「台湾萬歳」(酒井充子監督)に出演した東部・台東県成功鎮の張旺仔さんが今月17日に病気のため亡くなっていたことが分かった。同地の歴史や文化に詳しい鄭国正さんが明らかにした。享年94。
台湾の文化や物語をデジタルアーカイブ化して公開する文化部(文化省)のポータルサイト「台湾カルチュラル・メモリーバンク」(国家文化記憶庫)によれば、張さんは日本統治時代の1931(昭和6)年、南部・屏東生まれ。18歳で漁業を始め、20歳には沖縄出身の漁師と突きん棒漁に携わった。49歳の時に原因不明の目まいに襲われカジキ漁から引退したが、65歳まで漁師として活躍した。
2017年11月に中央社の取材を受けた張さんは、突きん棒漁には度胸が必要で、誰もができるものではないとし、船首にある高さ5~6メートルの台に立ち、体を支えるものがない中で、長さ5メートル、重さ6.2キロのもりを持ち、高い波を乗り越えながらカジキを探したと説明。漁師が10人いれば8人は手や足の骨を折ったことがあると仕事の厳しさを語っていた。
鄭さんは中央社の電話取材に、張さんは誠実で突きん棒漁の技術は一流だったと振り返る。3月末には鄭さんの自宅で2時間ほど話をしたと語り、特製の四輪バイクに乗って帰ったのを見たのが最後になるなんてと死を惜しんだ。